大家さんのご逝去
’93年のお盆明け、仕事も始まったところ、訃報が舞い込みました。
懇意にしていただいていた大家さんが亡くなったそうです。独り暮らしでしたが、80歳を過ぎてもなお、かくしゃくとお元気な方でした。
急な話で唖然としました。ただただご冥福をお祈りいたします。
出先の地方で亡くなったのですが、ご遺族の方にご連絡を下さいました。以前からご遺族に当方のお話をしていただいていたようです。
アパートを2軒、ずっとご自分で管理されていた方でした。几帳面な方でしたので、契約書類も連絡先もきちんとしていたようです。
御遺骨がご自宅に帰ってきたその日に、早速お伺いすることになりました。
特定の管理会社に任せずご自身が管理してきましたので、アパート経営にこれまで携わっていなかったご遺族が、とりあえずどうすればいいかというご相談です。
まずは、相続人全員の連名で、相続による賃貸人変更と賃料振込口座の変更をすべての賃借人に通知しましょう。
とりあえず相続人のうち代表の方の名義で新口座を作ります。人の死亡が知れるとその人の口座は凍結され、入出金ができなくなります。家賃の行き場がなくなってしまいますので、取り急ぎの対応が必要になります。
実際には、この時点で新貸主が確定したとは言えず、遺産分割協議を経て、このアパートを引き継ぐ方が確定します。ご遺族で充分話し合い、皆さんご納得の遺産分割を行うには少々時間が必要ですので、この時点では、貸主は相続人全員の連名がよいでしょう。
相続が発生した場合、初七日、四十九日を待たずに動かなければならない場合があります。
「遺言」の有無の確認も怠らないでください。
あとは相続人の方々がご納得する遺産分割協議を行っていただくことです。
その間、戸籍、住民票、印鑑証明、固定資産評価証明、登記簿謄本などを収集する必要もあります。
協議が整えば相続証明書、遺産分割協議書などを作成して相続登記を行い、「新貸主」が決定していきます。
亡くなった方の「準確定申告」もしなければいけませんので、アパート経営を含めたその方の収入支出も調べなければなりませんね。
一つずつクリアしていきましょう。
【ご質問がありました】
今後アパート経営は、相続人共同でやっていくことになるのか?
・・・・・
共同でされた方がいい場合もあるでしょうし、それが唯一の遺産である場合もあるでしょうけれど、一般論でいえば、不動産の共有はあまりお勧めしません。管理運営上身動きが取りづらくなったり、将来の権利関係が複雑になったりします。
結果、相続人皆さんからご意向を伺い、不動産の簡易査定から遺産分割のご提案、遺産分割協議書の作成を行い、相続登記や建物増築部分の表示登記の手配もし、無事大家さんの引継ぎを終えました。
【余談】
大家さんのご逝去にあたり、もう1軒のアパートのうち何部屋かを契約した不動産会社(大手賃貸業者)にも連絡をしたそうです。
そこから出てきたのは、「これを機にウチに入居者募集を全部お任せください。」という営業トークだったそうです。
恥ずかしいですね。